研究概要 |
亜熱帯域には乾燥した地域が多いが,梅雨前線帯・SPCZ(南太平洋収束帯)・SACZ(南大西洋収束帯)という3つの顕著な亜熱帯前線帯では降水活動が活発で,暖候期には降水強度が熱帯収束帯に匹敵する.本研究では,亜熱帯前線帯の生成メカニズムを明らかにすると共に,地球規模の水循環にはたす役割を衛星計測データを活用して検討した.本年度の研究成果は以下の通り. 1.水惑星大気大循環モデル内の亜熱帯前線帯を対象として,亜熱帯前線帯の降水による大気加熱が循環場に及ぼす影響を,渦度収支解析の手法により研究した.亜熱帯前線帯の降水に伴う上昇流は,下層で正渦度の生成,上層で負荷度の生成を行っており,この渦度変化を打ち消すように特徴的な循環場が亜熱帯前線帯の周囲に発達することがわかった.すなわち,下層では南西風が発達して,低緯度側から相対的に低渦度の気塊が移流されて正渦度生成を打ち消しており,上層では降水域の西方にトラフ,東方にリッジが発達して,偏西風により西方から相対的に高渦度の気塊が移流されて負渦度生成を打ち消していた.これまで観測的に指摘されてきた亜熱帯前線帯の循環場の特徴が,亜熱帯前線帯の降水による大気加熱で説明できることがわかった. 2.GPCP(Global Precipitation Climatology Project)は,地上の雨量計データと衛星によるマイクロ波,赤外域の観測データから,全球の月降水量データセットを作る計画である.このデータを1988年〜1996年の期間について収集し,解析した.緯度20度〜35度の亜熱帯域の降水は,量的には全球の降水量の〜20%を占め,亜熱帯域の低気圧経路に集中していることがわかった.また,亜熱帯域の低気圧経路の降水量は中緯度の低気圧経路に比べて非常に多いこともわかった.
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