研究概要 |
ADEOS/NSCAT散乱計の海上風ベクトルデータを気象庁ブイ,NASDAブイ,NDBCブイおよぴTOGA-TAOブイと比較することにより,精度検証を行うとともに,マイクロ波散乱計による海上風観測に対する観測環境の影響について調べた.ブイデータとの比較に際しては,観測位置のずれが25km以内,時間差30分以内のデータのみを用いた.ブイの風速・気温・湿度の観測データは,安定度の効果を含むバルク係数を用いて中立成層,高度10mの値に換算した.散乱計の風速とブイの風速の比較においては,残差の標準偏差が1.5m/s以下でよい一致が見られた.また,ERS-1/AMI散乱計データで見られたような,風速に系統的に依存する残差は,風速3〜15m/sの範囲で,全く見られなかった.風向の比較においては,低風速域でばらつきが大きいことが明らかとなった.風速5m/s以下のデータを用いれば,残差の標準偏差は25°以下となることが示された.観測環境が散乱計による海上風観測に与える影響を調べるために,ブイの気象・海象データと風速の残差との相関係数を計算したところ,有義波高とは正の相関が得られたが,海面水温や気温水温差などの相関は見られなかった.また,ブイの係留されている地理的位置や季節による系統的な観測誤差もほとんど見られなかった。以上より,ADEOS/NSCATは海上風ベクトル場を,観測環境の影響をほとんど受けることなく,高精度で観測できることが明らかとなった.
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