研究概要 |
1.Al-Mg合金の超塑性変形における構成元素の拡散 Al合金の超塑性機構を明らかにする目的でAl-Mg合金の超塑性変形に伴う結晶粒内の組織と組成変化を調べた。試料にはAl-Mg合金を用い500℃あるいは530℃の下で歪速度10^<-3>s^<-1>,あるいは,10^<-4>s^<-1>の超塑性変形を行なわせた。超塑性変形後の試料を鏡面研磨した後,X線マイクロアナライザーで組成分布を調べた。超塑性変形後の試料の後方散乱電子イメージ観察によれば,結晶粒界近傍(粒界ゾーン)と粒内とでは組成コントラストが異なることが見い出された。また,結晶粒サイズの減少と共に粒界ゾーンの占有率が増えている。粒内の組成は0.3〜0.4at%Mnであるのに対し粒界ゾーンでは0.1at%Mn程度であった。他の元素の組成を調べた結果,超塑性変形中にMnとCrは粒界ゾーンから粒内に移動するが,AlとMgはごくわずかであるが,逆に粒内から粒界ゾーンに移動することが見い出された。このように超塑性変形に伴って構成元素が粒界近傍で不均一になるのは固相内の拡散によるものか,あるいは一部,粒界近傍に液相が出現した結果の固液界面における溶質元素の再分配によるものか検討していかなければならない。 2.超塑性過冷却液体相を有するZr_<55>Al_<10>Ni_<10>Cu_<25>金属ガラスにおける拡散 測定されたNiおよびZrの拡散係数Dはガラス遷移温度T_gを境にしてアモルファス相から過冷却液体相にかけて急激に増大している。また,過冷却液体相ではNiとZrの拡散係数の大きさはほぼ同一であるが,アモルファス相ではNiとZrの拡散係数に1〜2桁もの大きな相違が生じることがわかった。過冷却液体相で両原子種の拡散係数にほとんど差異が見られないのは多くの原子が協力して動く"cooperative motion"によると考えられる。
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