非晶質やナノ結晶から成る非平衡合金材料は、従来材にない多くの優れた性質を有しているが、製法から形状が制約される上に、難加工性のものが多いため、それらの材料の超塑性が明らかになれば実用面でのメリットは大きい。また、学術面からも、上記非平衡材料を超塑性の観点から系統的に研究した例は国内外を通じてほとんどないため、その発現機構を解明して、従来からある超塑性材料と比較することは興味深い。 本研究では、衝撃超高圧力を発生可能な爆発成型法を用いて非晶質合金粉末を固化成形することを試み、ほぼ真密度の緻密なFe系バルク状非晶質合金を作製した。得られたバルク状非晶質合金を圧縮試験した結果、673K〜773Kの温度範囲で70%を越える大きな塑性変形が発生した。圧縮試験後の透過電子顕微鏡(TEM)観察により、それらのバルク状非晶質合金は、非晶質状態を保持したままでも、あるいは変形過程でナノ結晶化(結晶粒サイズ:20〜70nm)した場合でも、ともに圧縮により大きな塑性変形を付与できることを明らかにした。 さらに本研究では、上記と同一組成のFe系非晶質合金についてTEM内加熱引張その場観察を試みた結果、若干延性不足のためかクラックが発生した。そこで今後は、超塑性的な引張変形挙動が得られているうえに、実用上必要なバルク材も作りやすいZr系やLa系、Mg系等の広い過冷却液体領域を持つ非晶質合金について、非晶質状態や結晶化過程における超塑性の発現を詳細に調べたうえで、特に透過電子顕微鏡観察を中心にして、それら合金の未解明な変形組織と変形機構を微視的な観点から解明していく。 また、本研究では、超塑性材料研究の一環として、非平衡材料のみでなく金属基複合材料についても研究を行い、複合化が微細組織の形成とその粗大化抑制に効果があることを明らかにした。
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