本研究では光歪を示すPLZTセラミックスを選択的還元(セラミックスの片側の還元処理)することによって傾斜機能を持たせ、高い光歪みを得ることにより「歪の絶対量が小さい」と「応答速度が小さい」の問題を解決することを目的とする。電気伝導率の傾斜分布を持たせることで電気機械結合係数および光→電気エネルギー変換能(特に応答速度)を向上させること、そして熱歪みにより電気→力学エネルギー変換能を改善することを期待している。 本年度の研究実績をまとめると、下記のようになる。 1.選択的還元を施したPLZTセラミックスの光→変換特性(光起電力、応答速度)を評価した。その結果、選択的還元を施した試料はしないものに比べて光歪が3倍以上に向上し、かつ緩和時間も1/2以下になった。これは、傾斜化により見掛けの電気機械結合係数が大きくなったことと、部分的伝導化により光活性のキャリヤ-が増大したためであると考えられる。 2.還元が組成の傾斜に及ぼす影響をEPMAやESCA等で、および微構造をSEMで、機械的性質を微小ビッカース硬度で、相の分布をX線回折計で評価した。その結果、未還元側から還元側に向かって、これまで従来報告されていなかった部分還元相の存在が明らかになった。 3.誘電特性(εの周波数依存性)・強誘電特性(D-Eヒシステリシス)・電気伝導性をセラミックスの厚さ方向に測定し、『強誘電体-伝導体』傾斜機能を評価した。2)と同様に部分的還元(伝導)相の存在が明らかになった。 4.現在、エネルギー変換機能について還元状態の最適化を行いつつある。
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