光伝導性液晶を用いた分子性傾斜配を実現しその光電特性を明らかにするため、(1)スメクティック系光伝導液晶を用いた水平及び垂直配向基板の組み合わせによる傾斜配向セルの実現、(2)ネマティック系光伝導性液晶を開発しこれを用いた電場配向の実現について検討し、作製したセルの光伝導特性を定常暗光電流特性、過渡光電流測定から評価した。 (1)水平及び垂直配向基板の組み合わせによる傾斜配向セルの特性 鎖シリル化剤(Triethoxydecysilane(TEDS))で処理したAl基板と未処理のAl基板の組み合わにより作製したセルにスメクティク光伝導性液晶2-(4′-Pentylphenyl)-6-dodecyloxynaphthaleneを封入したセルでは、定常電流および過渡光電流のいずれの測定においても光照射、印加電圧の方向によらず光電流特性に違いが見られなかった。垂直配向セルおよび未処理基板を用いた水平配向セルでは2桁以上に及ぶ大きな光電流の違いが認められること、偏光顕微鏡下でのセルの観察結果から、作製したセルでは傾斜配向が実現されていないものと結論された。 (2)ネマティック系光伝導性液晶の電場配向による傾斜配向セル 新たに開発したネマティック光伝導性液晶、2-(4′-Pentylphenyl)-6-methoxynaphthaleneを用いた液晶セルでは、電場により明らかに傾斜配向が実現されていることが確認できた。しかしながら、その配向の変化に関らず、いずれの電流特性の評価からも傾斜配向から期待される光電特性の地が違いは見出されなかった。これは、この液晶における伝導がイオン伝導によるためであると考えられた。
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