研究概要 |
本研究においては、格子不整合を有する複合積層化合物(RS)_<1.2>(TS_2)_2(R=La,Ce,T=Cr,Nb)を用いて原子層単位の磁気秩序に関する基礎研究を行い、ナノスケール磁気傾斜機能材料の開発の可能性を探索した。昨年度合成した化合物群(RS)_<1.2>[M_X(TiS_2)_2](M=Mn,Fe,Co,Ni)に引き続き、本年度は(RS)_<1.2>(CrS_2)_2および(RS)_<1.2>[M_X(NbS_2)_2](M=Fe,R=La,Ce)の化合物群を新たに合成し、その磁気的性質をSQUID磁束計を用いて測定した。(RS)_<1.2>(CrS_2)_2の磁気的性質は11A離れたCr層のみに起因し、70Kおよび30Kでの逐次相転移を示した。これは2次元三角格子反強磁性体とみなすことができ、フェリ磁性構造から120度反強磁性構造への相転移と考えられた。一方(CeS)_<1.2>(CrS_2)_2においてはCeの磁性が新たに加わり、5.5KでCe層の磁気秩序が観測された。これらの磁気秩序は独立に形成されるが層間の相互作用はかなり大きく昨年度得られた(RS)_<1.2>[M_X(TiS_2)_2]とは大きく異なる性質を示した。(RS)_<1.2>[M_X(NbS_2)_2](M=Fe,R=La,Ce)は全く新しい化合物である。(LaS)_<1.2>[Fe_X(NbS_2)_2]においてFeは超格子構造を形成し、NbS_2層間で規則正しい配置をしている。この物質の磁気秩序は17A離れたFe層のみに起因し、やはり20Kと12Kで二つの磁気秩序を示した。この物質は2次元三角格子反強磁性体であり、磁化容易軸が積層方向を向いているため非常に強いスピンのフラストレーションを示す化合物であり、二つの磁気転移は部分秩序状態からフェリ磁性状態への逐次相転移と考えられた。さらに(CeS)_<1.2>[Fe_X(NbS_2)_2]においてはCe層の磁気秩序が3Kに独立に観測された。これらの結果から、物質の種類を変化させることにより相互作用の強さと磁化の方向を制御した傾斜材料の開発の可能性が考えられる。
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