研究課題/領域番号 |
09229230
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
辻田 義治 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (70016591)
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研究分担者 |
吉水 広明 名古屋工業大学, 工学部, 助手 (10240350)
木下 隆利 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (60135407)
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キーワード | 傾斜高分子膜 / 相溶性ポリマーブレンド / ポリメチルメタクリレート / スチレン-アクリロニトリル共重合体 / 気体透過係数 / 気体輸送特性 / 直列モデル |
研究概要 |
一般に均質な材料中を透過分子が定常状態で透過しているとき、その濃度は線型勾配である。しかしながら、透過方向に成分組成が不均質な材料中では線型濃度勾配にはならず、例えばある透過分子に対し、その溶解性が異なる2成分から成る膜の成分組成が膜厚方向に傾斜構造を有する場合、その膜の表面から透過させた場合とその逆の場合とでは透過量が異なる。本研究ではこのような機能を念頭に置き、2成分ポリマーブレンド系においてその成分組成が膜厚方向に線型濃度勾配を有する傾斜高分子膜の調製を目的にしている。相溶性ポリマーブレンドとしてポリメチルメタクリレート(PMMA)/スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)系を用いて、その構造特性と気体輸送特性の関係について検討し、傾斜構造を有した場合の気体透過係数の見積もりとその試作を行った。PMMA及びSANの気体溶解性の差異は既に確認されている。傾斜膜の調製は予め調製しておいたPMMAキャスト膜の上にSAN溶液を展開する方法で行った。この方法によってPMMAはその一部がSAN溶液との界面から溶け込み、キャスト条件を適切に選べば、傾斜構造の形成が期待される。まず、PMMA/SAN系相溶ブレンド膜の気体透過特性を調べた上で、直列モデルを用いて理想傾斜膜の透過係数値を見積もった。理想傾斜膜の気体透過係数(計算値)は完全相溶膜と単純な貼合わせ膜それぞれの値の中間値をとった。今回試作した傾斜膜の気体透過係数(実測値)も同様であったので、傾斜構造の定性的な確認ができた。さらにATR-FTIR法を用いて膜の表面構造を解析したところ、成分組成が膜の両表面で異なっていた。また、本研究で調製した傾斜膜は膜に対する気体の透過方向によりその透過係数が異なることも確認できた。従って、所期の目的は達成された。
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