研究概要 |
傾斜機能高分子材料の合成は、高分子材料中への反応性低分子の拡散制御による方法や高分子鎖の相溶性・混和性の差を用いる方法等により進められている。我々は、典型的な液状ゴムであるポリウレタンの分子設計の容易さを用いて、分子鎖の化学構造・合成条件と高次構造・諸物性との関係を調べてきたが、そのなかで硬化温度により生成する球晶の形状、数、ガラス転移温度等が異なることを見いだした。この結果に基づき金型に温度勾配をつけて硬化させる成形温度勾配法で、球晶サイズと高次構造が傾斜したポリウレタンが合成できるとの考えに至った。本研究では球晶サイズと高次構造を傾斜させることにより弾性率等の物性が傾斜したポリウレタンの合成と物性評価を第1の、また傾斜構造の制御のための基礎的知見を得るために偏光顕微鏡を用いたその場観察による球晶成長挙動の硬化温度依存性を明らかにすることを第2の目的とした。ポリマーグリコールに平均分子量2000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)、ポリ(エチレンアジペ-ト)グリコール(PEA)、ポリ(カプロラクトン)グリコール(PCL)を、ジイソシアナ-トに4,4´-ジフェニルメタンジイソシアナ-ト(MDI)を、鎖延長剤(硬化剤)に1,4-ブタンジオール(BD)とトリメチロールプロパン(TMP)の混合物(重量比75/25)を用いた。温度勾配を有する金型を使用する新規なPUE成形プロセスを開発してPUEの傾斜化を試みた結果、高温成形面側から低温成形面側へ球晶の大きさと数が連続的に変化したミクロ相分離構造を取る傾斜機能PUEを得ることができた。いずれのPUEともマイクロ硬度は低温成形面側から高温成形面側へと連続的に変化した。今後、、製品の要求性能、機能に合わせて温度勾配条件を制御することにより、種々の用途に応用可能な傾斜PUEの獲得が期待できる。
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