本年度の研究成果は以下の通りである。 1.各移動体がデータベースを保持する分散データベース環境を想定し、そのような環境下で移動データベースへのアクセスにかかる通信コストを削減するための動的複製配置手法を提案した。具体的には、データベースサーバとなる移動体だけではなくクライアントとなる移動体も移動することを考慮し、サーバとなる移動体の移動に伴ってその移動体が保持するデータベースの複製を固定ネットワーク上で動的に配置する移動体追跡複製配置手法(PTRA)、および、クライアントとなる移動体の分布やアクセス頻度に応じてデータベースの複製を固定ネットワーク内で動的に配置するユーザ優先複製配置手法(UMRA)の二種類の動的複製配置手法を提案した。また、UMRAのバリエーションとして、クライアントとなる移動体ごとにデータベースへのアクセス頻度が異なることを考慮し、アクセスの発生頻度が最も高いセルに複製を再配置する戦略(UMRA-FRD)と、ネットワークのトポロジを考慮して複製の再配置先を決定する戦略(UMRA-DRD)を考えた。これらの提案した手法をシミュレーションによって比較評価し、それぞれの手法の特性を明らかにした。 2.移動体計算環境でのトランザクション管理に関して、データベースアクセス技術、WWW技術、移動体計算技術を統合したシステム開発の枠組みを提案した。特にその実現例として、WWWブラウザが動作するクライアントを用いたショッピング支援システムの構築を行った。
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