我々は従来より、キラルリチウムアミドあるいは対応するキラルなアミンを用いることによって、リチウムエノラートのエナンチオ選択的な合成と反応に成功してきた。また、反応性の高いキラルなリチウムアミド(あるいはアミン)と反応牲の低いアキラルなアミン(またはリチウムアミド)を組み合わせることによって、リチウムエノラートの合成と反応の両プロセスを不斉触媒反応とする端緒を拓いた。本研究の目的は、上記の結果を踏まえ、リチウムエノラートの合成と反応を効率の良い不斉触媒反応とする実践的手法とすること、およびこれらの不斉反応の反応機構を明確にすることである。 平成9年度には以下の知見が得られた。(l)四配座型キラルアミンを用いた触媒的不斉アルキル化反応の反応および不斉選択性の機構を明らかにする目的で、アキラルな四配座型アミンとリチウムエノラートあるいはさらに臭化リチウムとの錯体の、結晶単離とX線結晶解析を試みた。その結果、アミン・リチウムエノラート・臭化リチウムの三者からなる結晶構造、およぴアミン・リチウムエノラートの二者からなる結晶構造、アミン・臭化リチウムの二者からなる結晶溝造がそれぞれ明らかとなった。 (2)我々は以前、四配座型キラルアミンを化学量論量用いたアキラルリチウムエノラートの不斉プロトン化反応について報告した。今回、キラルアミンの構造を変換し、更に反応性の低いアキラルなアミンと組み合わせることによって、触媒量のキラルアミンを用いても、不斉プロトン化反応が効率的に起こることを発見した。今後、キラルアミンの構造を種々変換することにより、より効率の良い触媒を探索する予定である。
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