本研究ではチオアセタールから誘導されるSchrock型カルベン錯体を利用する炭素-炭素結合生成反応について検討し、以下に述べる炭素基本骨格の構築法を開発した。 1.カルボニルオレフィフィン化反応の拡張;チオールエステルのオレフィン化について検討し、ビニルスルフィドが収率良く得られることを見い出した。またビス(フェニルチオ)メタンのシリルメチル化で得られるチオアセタールを用いることによりアリルシランを合成することができた。チオアセタールの代わりにオルトチオエステルを用いるとカルボニル化合物はビニルエーテル・ビニルスルフィドに変換された。 2.gem-ジハロゲン化物を用いるオレフィン化;ケトンから誘導されるgem-ジバライドと低原字価チタンを用いるオレフィン化反応について検討したところ、好収率で多置換オレフィンが合成できることが判った。 3.ビニルシクロプロパン合成の改良;低原子価チタノセンを用いることによりオレフィンと不飽和チオアセタール類からビニルシクロプロパンを簡便に合成する方法を確立した。 4.アリルシランとのメタセシス反応;飽和チオアセタールから誘導されるカルベン錯体とアリルシランとの反応ではγ-置換アリルシランを与えることが判った。この反応では約90%の立体選択性でZ体が優先的に生成することが明らかとなった。 5.カルベン錯体とアルキンの反応;カルベン錯体にアルキンを作用させた場合にはチタナシクロブテン中間体の形成の後、β-ヒドリド脱離と還元的脱離が順次進行し、共役ジエンが高立体選択的に生成した。
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