研究概要 |
カルボニル基のアリキリデン化反応にはWittig反応が広く用いられている。この反応はリンイリドを用いるが、官能基選択性に検討の余地がある。また、反応剤が塩基性を示すために、異性化反応が伴って進行する場合があり、塩基性を示さない反応剤の開拓も望まれていた。本研究では、官能基選択的アルキリデン化反応に取り組み、アルデヒドとケトンとを分子内に有する化合物に作用させて、アルデヒドのみメチレン化する反応剤を開拓した。 ジヨードメタンに鉛触媒存在下にTHF中で亜鉛を作用させると、有機二亜鉛化合物であるbis(iodozincio)methaneが収率60%で得られること、このTHF溶液中にはこの二亜鉛化合物のみが含まれていることがNMR測定により明らかとなった。この反応剤は、アルデヒドと反応してメチレン化体を与えるが、ケトンとはほとんど反応せず、高い官能基選択性を示す。ケトンのメチレン化には、二塩化チタンを加えることで達成でき、高収率でケトンのメチレン化も可能である。同様に有機二亜鉛化合物は、1,1-ジヨードエタンからも得られ、またジブロモメチルトリアルキルシランと亜鉛との反応で、トリアルキルシリル置換体も調製することが出来る。これらの二亜鉛化合物とカルボニル基との反応は、二塩化チタン共存下に円滑に進行し、アルデヒドおよびケトンをアルキリデン化することが出来る。しかし、これらの場合には、官能基選択性は乏しい。 有機二亜鉛化合物は、二種類の求電子剤と順次に反応させることも可能であり、一つの炭素原子に二種類の有機基を順次結合させる炭素鎖構築法が開拓できた。
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