研究概要 |
基礎的知見を得ているシリル基の転位を利用する1,3-双極子発生を、他の典型金属や他のヘテロ原子に展開するとともに、(ポリフルオロ)シランの特性を活用する双極子発生法を検討した。また、新規な安定化環状1,3-双極子であるメソメリックベタインの発生法を検討した。 1.α-スタニルイミンやアミドのスタニル基の分子内転位によるアゾメチンイリド中間体の発生を試みたところ、イミンの場合にケイ素誘導体よりも転位が速く進行し、効率よく1,3-双極子が発生することを見出した。その結果、本法の適用範囲が大きく拡張された。 2.α-シリルアミドよりもチオアミドの方が転位が速く進行し、効率よくヘテロ環が合成できた。この効果から、今後チオアミドとスズの組み合わせが有望であることが示唆された。 3.また、α-シリルアミドの窒素を硫黄に置き換えたα-シリルチオールエステルでもケイ素の転位が進行し、従来発生法が少ないチオカルボニルイリドの発生に成功した。 4.α-シリルイミンを(ポリフルオロ)シランにより四級化、脱シリル化してアゾメチンイリドを発生させる方法や、アザアリルアニオンに(ポリフルオロ)シランを直接作用させ、シリル化、四級化、脱シリル化をone-potで一挙に達成させて活性種を発生する手法を開発した。 5.ピロロあるいはイミダゾトリアゾリノンのアルキル化によって、単離可能な安定化アゾメチンイミンであるピロロあるいはイミダゾトリアゾリウムオラート型のメソメリックベタインの合成法を見出した。 6.上記の1,3-双極子性活性種とアセチレン系親双極子剤とのシクロ付加を検討し、縮合ヘテロ8員環であるピロロあるいはイミダゾトリアゾシノンが合成できることを明らかにした。
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