ラジカル生成における有力な手段である遷移金属錯体の一電子レドックスプロセスを円滑に作用させた効率的な電子伝達システムを構築することにより、従来難しいとされていた一電子酸化還元触媒系を可能にしてきた。 1)還元的カップリング反応において、溶媒や触媒系を形成させるため必須なクロロシランの選択が、炭素-炭素結合生成におけるジアステレオ選択性を発現するための必要であることを明らかにした。 2)分子内にラジカル受容体部位が存在する場合、分子内カップリング反応が起こった。この変換も触媒的に進行し、対応する付加体のアルコールが生成した。例えば、ジカルボニル化合物から出発すれば、両者がカップリングした環状ジオールが得られた。また、オレフィニックアルデヒドが基質であれば、ケチルラジカルのexo環化によって生じたラジカル中間体がクロロ基で捕捉されたクロロアルコールへ誘導された。いずれの触媒反応においても、本触媒系を用いることで炭素-炭素結合における非常に高い立体選択性が見られた。 3)バナジウム錯体以外の錯体で一電子還元を可能にする触媒系が可能か明らかにするため種々の錯体でスクリーニングした。アルミニウム共存下、希土類金属であるヨウ化イッテルビウムが一電子還元剤として作用することが判明した。種々のハロゲン化物が効率的に還元された。 以上の如く、遷移金属錯体の一電子レドックスプロセスの触媒化に基づき、有機合成的に有用な実践的分子変換法が可能となった。
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