水生生物には陸上生物には見られない、新規の骨格、構造を有し、しかも興味ある生物活性を示す化合物がしばしば見出される。しかしその多くは微量成分として存在し、生物活性のテストもままならないのが現状である。我々はこのような水生生物由来の微量生物活性物質の大量供給を目的として本研究を行っている。具体的な天然物としては、海綿より得られた抗ウィルス性、鎮痛活性を有するヘノキサゾールA、水生ラン藻より得られた強力なトリプシン阻害活性を有するラディオスミン、そして海生ラン藻よりのアンティラトキシンをとりあげ、これらの効率的合成法の確立を目指して研究を行った。これらはいずれも特異な骨格、特異な構造を有しており、その合成には新規方法の確立が必須である。ヘノキサゾールAについては、その骨格を三分しそれぞれの構築を行いこれに成功した。今後はこれら三つの成分を連結して全体を合成する予定である。ラディオスミンについては、合成により未決定であった絶対配置を確定することができ、かつ全合成に成功した。アンティラトキシンにおいては、ペプチド部分とジエン部分のそれぞれの構築を行い、今後全体分子の構築を行う予定である。
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