本研究は、遷移金属の配位場における分子集合に着目し、配位性有機分子の遷移金属への配位を駆動力として、ナノ構造を熱力学平衡の結果として自発的に集合(自己集合)させ構築すること、さらにはその特異な構造に基づいて、新しい機能を発現させることを目的とする。ナノ構造としては、とりわけ、二次元あるいは三次元ナノスケール内部空間を有する大環状あるいはかご状超分子錯体、および分子素子の構成要素として注目されているインターロック超分子錯体(カテナン、ロタクサン)に着目する。 今年度は交差カップリング反応により、Py-ArおよびPyCH2-Ar骨格(Py=4-ピリジル)を効率良くつくる条件を精査し、これらの基本骨格を有する多座ポリピリジン配位子の高効率合成法を確立した。また、前年度までの研究で得ている自己集合性箱型およびかご型錯体の配位子骨格に適当なスペーサーや官能基を挿入し、錯体内ナノ空間を二次元的あるいは三次元的に拡張した。一方、これまでの研究で得られている自己集合性カテナン錯体について、この構造が自己集合する駆動力を明らかにし、インターロック分子の汎用合成法を確立した。特に芳香環一つの認識に適した長方形の箱構造の設計し、安定な[2]カテナンの高効率な自己集合を達成した。
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