光合成アンテナ錯体は、クロロフィル集合体を組織化し、成分間の速やかなエネルギー移動により、補足した光エネルギーをリンク構造内に非局在化させ、空間の全ゆる方向へのエネルギー移動を可能にする合目的性を提供している。このような光合成反応に関わる色素を、タンパク質を使わずに組織化する試みとして、ポルフィリンのメソ位置に複数のN-メチルイミダゾールを取り付けた新規化合物を合成した。 またキレート配位子として優れた特性を有するヒドロキシキノリンで置換したポルフィリンを合成し、そのGa錯体を調製したところ、その錯体は3量体でmeridional構造を有していることを明らかにした。この錯体についてベンゾキノンを用いてエネルギー移動効率を評価した。Stern-Volmerプロットからエネルギー移動消光を評価すると、Ga錯体は単量体に比べ2.3倍の消光効率を示した。しかし蛍光寿命は両者殆ど同じであり、錯体成分のポルフィリン間で速やかなエネルギー移動が行われ、励起エネルギーの非局在化が起こっていることが示唆された。 このエネルギー移動速度を直接評価するため、偏光励起による蛍光アップコンバージョン法を用いて、蛍光異方性の緩和測定を行ったところ、ポルフィリン単量体の異方性の減衰曲線は110psの単一成分を用いて解析されたが、Ga錯体は長寿命成分が170psと長くなると共に、もう1つの12.5psの短寿命成分が存在することが分かった。従って長寿命成分は回転緩和に帰属され、一方短寿命成分は近接するポルフィリン間のエネルギー移動に基づく緩和過程に帰属される。以上の結果から天然と同様なエネルギーの非局在化機構に縦って、光エネルギーの効率的な集光・伝達能を有するアンテナ機能体が組織化されたと結論できた。
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