触媒的不斉反応を重合反応に応用し、主鎖に不斉を有するキラル高分子を合成する手法を確立するために本研究では不斉Diels-Alder反応を素反応とした重合法について検討した。 不斉Diels-Alder反応に適した二官能性化合物を不斉Diels-Alder重合のモノマーとして合成した。すなわちジエンおよびジエノフィル構造を含むモノマーを種々合成した。ジエン成分には、イソプレン型、ブタジエン型、フラン型、シクロペンタジエン型、アントラセン型のモノマーを、また、ジエノフィル成分としては、アクリレート型、メタクリレート型、フマル酸型、マレイン酸型、マレイミド型、のモノマーをそれぞれ合成した。 重合には、ジエン-ジエン型モノマーとジエノフィル-ジエノフィル型モノマーの二成分系重付加と、ジエン-ジエノフィル型モノマーの一成分系自己重付加型の重合を試みた。Diels-Alder反応は一般に、ルイス酸触媒によりジエノフィル成分が活性化され反応が速やかに起こるようになるが、光学活性ルイス酸触媒を用いると、Diels-Alder反応は立体選択的に反応が進みキラル環状付加体が得られる。上記のモノマーに対して種々のキラルルイス酸を不斉触媒として用いて不斉Diels-Alder重合を行った。ジエン成分にフェニルブタジエン型、ジエノフィル成分にマレイミド型を用いると不斉Diels-Alder重合が効率よく進行し、対応するキラル高分子が定量的に得られた。分子量が数千から2万程度のキラル高分子が得られた。 上記のようなキラルルイス酸触媒を用いる不斉重合として、不斉Diels-Alder重合のほかに、不斉アルドール反応、不斉アリル化反応を基本反応とする重合についても同様に不斉重合を検討した。
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