本研究では、新しい転送行列法を用いることによって、Photon Assisted Tunneling(PAT)による大きな電流変化が起こる系を理論的にデザインし、I-V特性や光照射抵抗などを定量的に計算した。単一障壁系や二重障壁系において有効な光照射効果が得られないことは、以前の我々の研究によって明らかにされている。その研究によると、系に共鳴トンネル準位が存在し、かつその準位を通る電子の透過率が小さい場合に大きな光照射効果が得られることになる。この知見をもとに、本研究では非対称三重障壁系におけるPAT効果について数値的な研究を行なった。その結果、非対称三重障壁系でのPAT効果は、二重障壁系のそれに比べ100倍以上も大きいことが明らかになった。本研究ではさらに、PAT効果によるコンダクタンスの温度依存性、および光強度依存性についても数値的研究を行なった。本研究の数値計算に用いられたアルゴリズムは、通常の転送行列法をエネルギーが保存しない系に対しても使えるように拡張したもので、シュレ-ディンガー方程式の直接積分に比べて10^4倍も高速に計算できる。この方法を用いることによって、本研究で対象としたような三重障壁を持つ複雑な系を数値的に研究することが可能となった。
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