Si高密度量子ドット形成に向けて、真空中でSi表面の熱窒化で形成したnmサイズのSiN核をマスクとした熱酸化を詳しく調べた。熱酸化は、その条件によって大きく次の2つに分類される。(a)真空中での低酸素分圧、高温化での酸化であり、Si表面で揮発性のSiOが生成されてSiのエッチングが進行する。(b)通常の電気炉における酸化であり、1気圧の酸素下でSi表面にはSiO_2膜が成長する。このうち(a)については、昨年度までの実験で、SiN核が十分な耐性をもち、SiNで覆われていないSi領域のエッチングによってSiピラ-が形成できることを明らかにした。平成9年度は主に単電子デバイス作製上重要となる(b)の通常の熱酸化条件でのSiN核の耐性を調べた。その結果、以下の事実が明らかになった。 1.この条件でもSiN核は熱酸化を抑制する働きがあり、SiN核で覆われていないSi領域のみ選択的に酸化膜が成長する。実際、酸化膜をHF水溶液で除去後、AFM観察したところ、高密度のピラ-が観察された。 2.しかし、ピラ-高さはSiN核の形成温度に強く依存している。すなわち、800℃以上の高温SiNは、理想的なマスク性をもつのに対して、それ以下では窒化温度の低下とともにピラ-高さは急激に減少し、不完全なマスク性を示している。 3.XPSによる評価から、この不完全なマスク性は、SiN核自体が次第に酸化され、SiNからSiONへと変質することにとって引き起こされることが判明した。すなわち、SiONに変化すると、その中を酸素が拡散して直下のSiを熱酸化し、これによってピラ-高さの減少を生じさせる。 以上の結果から、次のステップとしてSOI基板を用いて量子ドットを作製する際の指針が得られた。
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