地震観測網などの充実に従って、地盤の揺れに関するデータは、より小さな単位で、かつ、応答スペクトルなどのより詳細なデータの入手が可能である。本研究は、そうした情報を前提にして、建築年、建築面積、壁量などの建物の属性から振動特性を推定し、予想される地震動の応答スペクトルとを付き合わせることによって、建物の被害確率を推定しようとするものである。本年度の研究では、以下のような研究を実施した。 1.壁量や構法など、属性の分かっている建物約30棟について、その常時微動測定を実施して、固有振動数など、それらの振動特性を把握した。その結果、近年の住宅は、著しく剛性が向上しており、固有周期が0.2〜0.3秒程度であることが分かった。 2.既往の実験などから、地震時に問題となる変形領域における固有振動数と常時微動における固有振動数の関係を整理した。実大規模の振動実験におけるデータを約10ケースを収集し、常時微動と比較的大きな変形における固有周期の関係式を誘導した。 3.常時微動測定を実施した建物について、耐震診断を実施した。その結果と、常時微動の関係を整理した。 4.建築年、建築面積、壁の仕様、壁率などの建物の仕様と量から、常時微動がどのように、形成されて行くかを分析し、建物の仕様と間取り(特に壁量)から、建物の固有周期を推定する方法を提案した。
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