一定の引張り軸力や引張りから圧縮まで変動する軸力を受けるRC柱・梁接合部のせん断変形やせん断強度を静的繰り返し載荷実験によって検討した。既往の研究ではこのような軸力を受ける柱・梁接合部のせん断挙動を把握するための実験がほとんど行われておらず、せん断変形の進展状況やせん断破壊に至るメカニズムを詳しく調査することが重要である。比較のため一定の圧縮軸力を与える実験も行なった。実験では一方向では外柱となり他方向では内柱となる側柱・梁接合部の十字形骨組(平面的には内柱・梁接合部)を対象とした。この部分の内柱・梁接合部に作用する軸力は地震時には大きく変動すると想定される。試験体は実物の約1/2.5に縮小したRC柱・梁接合部を含む十字形部分架構3体とし、軸力の大きさおよび変動幅(一定引張り軸力1体、一定圧縮軸力1体および複雑な変動軸力1体)を実験変数とした。具体的には柱断面を300mm×300mm、梁断面を250mm×300mmとした。簡単のため直交梁やスラブは付加しなかった。梁の上・下端筋とも接合部内を通して配筋した。接合部横補強筋はせん断強度には影響をほとんど与えないがせん断変形性状には影響すると考えられるので、実設計で一般に用いられている程度の量(鉄筋比で0.4%)を配筋した。実験は柱脚をピン支持、梁端をローラー支持した部分架構試験体の柱頭に正負繰り返しの水平力を与えることによって行なった。その結果、柱の軸力は柱・梁接合部のせん断強度には大きな影響を与えなかったが、せん断変形角は圧縮軸力下よりも引張り軸力下において大きくなった。また接合部内を通し配筋された梁主筋の付着性状は引張り軸力下において劣化が顕著であった。主筋の付着性状と柱・梁接合部のせん断強度との関係を今後検討する。
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