本研究では、実際に地震によって亀裂を生じた鋼製橋脚の柱基部と梁柱隅角部を対象として、比較的大きな地震力を想定した数回から十回程度の繰返しで破壊が生じるような超低サイクル領域を狙った繰返し載荷実験、および鋼材の繰返し応力ひずみ関係を用いた3次元弾塑性有限要素解析を行い、鋼製橋脚の超低サイクル疲労挙動および補強方法について検討した。本年度の主な研究実績は以下のとおりである。 1.平成7年1月の兵庫県南部地震の際に実際に亀裂が発生した鋼製橋脚の基部および梁柱隅角部をモデル化した試験体を製作した。従来用いられてきた鋼製橋脚の試験体は、断面のプロポーションを実物と合わせるために板厚を極端に小さくしたものが多い。そのような試験体では、亀裂を生じる溶接継手部のディテ-ルが実物とは全く異なるために、実構造物の破壊挙動を再現することは不可能である。本研究では、鋼製橋脚の基部および隅角部の超低サイクル疲労挙動を再現できるように、亀裂が生じる継手部をできるだけ実物に忠実にモデル化した試験体を製作した。 2.上述の試験体を用いて一定振幅の繰返し載荷実験を行い、数回〜十回程度で破壊が生じるような超低サイクル領域について、その基本的な疲労破壊挙動を把握した。載荷実験には、本学所有の動的容量400kNおよび600kNの2台の疲労試験機を使用した。 3.上述の載荷実験に対して鋼材の繰返し応力-ひずみ関係を用いた弾塑性3次元有限要素解析を行い、試験体の応答特性や変形挙動の予測、および亀裂発生や破断までの寿命評価を実施した。
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