本研究では、部位特異的変異導入法によりアミノ酸変異を導入した各種変異型CooAを調製し、それらの各種分光学的性質および、in vivoにおける転写活性化因子としての活性を調べることにより、CooA中に含まれるヘムの軸配位子の決定、COによるCooA活性制御の反応機構の解明を行なった。77Kにおいて酸化型CooAのEPRスペクトルを測定すると、システインが配位したヘムに特徴的なシグナルが観測される。75残基目のシステインをアラニンに置換したもの(C75A-CooA)は、酸化型において五配位高スピンヘム蛋白質に特徴的な電子スペクトルを示した。これらのことから、Cys75は、酸化型CooAではヘム軸配位子として機能していることが分かった。また、還元型およびCO型CooAでは、Cys75はヘムより解離しており、かわりにHis77が配位していることが分かった。C末端部分を削除した変異型CooAを調製し、その性質を調べた結果、CooAにおいてはN末端から131残基目までの部分が、ヘム結合ドメインを構成していることが判明した。 CooAの転写調節因子としての活性を評価するため、lacZをレポーターとするin vivoレポーターシステムの構築を行った。プロモーターを欠損したlacZ上流に、CooAにより発現が制御されることが判明しているR.rub run cooF遺伝子のプロモーター領域を挿入することによりレポーター遺伝子を調製した。本レポーター遺伝子を有する大腸菌をCooA発現ベクターにより形質転換後、CO存在下において培養すると、時間の経過と共に、LacZ活性の増加が観測される。COが存在しない場合には、LacZ活性は、ほとんど観測されなかった。これらの結果より、大腸菌内においても、CooAがCOにより活性化され、転写活性化因子として機能していることが分かった。
|