研究概要 |
活性中心に単核および複核の鉄イオンあるいは銅イオンサイトを有するモノオキシゲナーゼの機能に着目し、それらによる分子状酵素の活性化機構と酸素化反応のメカニズムの解明を目差して検討を行った。具体的には、主に錯体化学、物理化学、有機合成化学の方法論を駆使して、新しいタイプの構造・機能モデルを構築し、それを利用したモデル研究を展開した。特に本研究では、活性種の構造と機能の両方について情報が得られるような、新しいタイプの構造・機能モデルの開発を目差した。 我々はすでに、銅モノオキシゲナーゼの一つとして注目されているドーパミンβ-ヒドロキシラーゼの機能モデルとして、分子内に基質部位を有する銅錯体を用い、酸素による基質ベンジル部位の定量的な水酸化反応を見いだし報告した(S.Itoh et al.,J.Am.Chem.Soc.1995,117,4714)。また、本水酸化反応における活性種はμ-η^2:η^2‐型ペルオキソ二核銅錯体であることがすでに解っている。そこで本年度も引き続き、分子状酸素の活性化や基質部位水酸化のメカニズム解明のための情報を得るため以下のような点について検討を行った。【1】反応性に及ぼす配位子の影響を明らかにするため、種々の三座配位子を合成し、それらを用いて配位子の水酸化反応や外部基質の酸素化反応について系統的に検討し、置換基効果や同位体効果を明らかにした。【2】活性酸素錯体の構造や生成速度に及ぼす配位子の構造の影響を調べるため、一価の銅錯体と酸素の反応を低温で行い、紫外-可視スペクトルやラマンスペクトルなどを用いて詳細に検討した。また、水酸化反応に及ぼす溶媒効果や対アニオンの効果についても検討し、反応機構について考察を加えた。【3】基質部位のフェニル基をフェノール基に変えた配位子を種々合成し、芳香族の水酸化反応について検討し、配位子の構造と反応性の関係を明らかにした。
|