研究概要 |
1)腸炎ビブリオfur遺伝子のクローニング:Furタンパクの機能解析のために、まずその遺伝子のクローニングを行った。大腸菌H1780(fur欠損株)を相補するクローンについて塩基配列を決定したところ、149アミノ酸をコードするORFが見つかり、大腸菌Furとの相同性(identity)は81%を示し、fur遺伝子であることが判明した。現在、Furタンパクの大量発現系を構築中である。 2)マンガン耐性を指標としたfur変異株の選抜を解析:マンガン耐性株は高率にfur遺伝子に変異に持つことが報告されており、その変異を解析することによってFurタンパクの機能発現に必要なアミノ酸残基を特定できると考えられた。腸炎ビブリオWP1株により単離したマンガン耐性株10株はいずれも鉄獲得系遺伝子の発現が脱制御されており、furにおける変異体であることが示唆された。これらの株からfur遺伝子をPCRクローニングし、塩基配列を決定することによって変異アミノ酸残基を決定すべく検討中である。 3)FUR-TA法による腸炎ビブリオ鉄制御遺伝子の単離と解析:FUR-TA法は大腸菌における鉄制御遺伝子の単離のために開発された。腸炎ビブリオFurタンパクが大腸菌のそれと高い相同性を示したので、本法を用いて腸炎ビブリオ鉄制御遺伝子の単離を試みた。陽性クローンインサートの塩基配列を決定し、相同性検索によって現在までに4種の鉄制御遺伝子が同定された。:1)ferric aerobaction precursor,2)ATP-binding protein,3)sodA(Mn-SOD),4)fumC(fumarase)。1)と2)は恐らく腸炎ビブリオが産生する鉄キレーターの取り込みに関与する遺伝子であると思われる。これ以外にもFur boxを持つ多数の遺伝子が見つかっており、目下、それらの機能を解明すべく全長遺伝子のクローニングを行っている。さらに、本法を他の病原ビブリオ(V.mimicus,V.vulnificus)にも適用し、これからも多数の鉄制御遺伝子を単離した。
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