pre-tRNAの自己切断活性が見い出され、pre-tRNAのイントロン切除が起こっていることが明らかにされている。特にイントロンをもつArabidopsis tRNA^<Tyr>では非イオン界面活性剤の系でもスプライシングエンドヌクレース依存性切断が起こると考えられることから、RNA酵素とともに生命の進化に大きな関係があるものと考え、これら切断反応の作用機序を詳細にすることも目的とする。イントロンを含むpre-tRNA^<Tyr>に対するイントロン切除を確認するために、まずモデル反応としてピリミジン-A間で切断が起こるようなRNA13mer(GUUUCGUACAAAC)を用いてスプライシング反応に必須であるMg^<++>の存在下、切断反応に要求される最適条件を検討した。そしてMg^<++>濃度、5μM、pH7.8、反応温度37℃の条件下で最高の切断活性を示した。そこで実際にArabidopsis thaliana tRNA^<Tyr>をT7転写により構築し、上記で述べた条件下でイントロンの切除を試みたところ、主にtRNA^<Tyr>のU_<49>-A_<50>、U_<38>-A_<39>間で切断が起り、5'-_<39>AGACGCAGAUU_<49>-3'のイントロン部位が切除されることがわかった。しかし、スプライシング反応にはMg^<++>が必須であることから、Mg^<++>の存在下で反応を進行させているために、逆にtRNA^<Tyr>の構造を安定化させ、切断活性が低下するといった結果が得られた。この切断反応をMg^<++>のかわりにNH_4^+の存在下で行った場合にはその切断活性も向上した。特にtRNA^<Phe>の結晶構造中には4個のMg^<++>が配位し、その安定性に寄与していることからも、Mg^<++>が切断活性に強く影響を与えているものと思われる。 現在Mg^<++>-Briji58の濃度を変化させることでその切断活性の向上にもつとめている。また、通常スプライシング反応は低温で進行しやすいとの説もあり、この点についても検討中である。しかし、Mg^<++>-非イオン界面活性剤の系でtRNA^<Tyr>のイントロン切除が起こるといった事実は初めての例となる。
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