本研究では、非磁性金属/磁性金属人工格子やナノグラニュラー複合膜の磁性と原子レベルの構造との関係を研究するために、(1)非磁性金属や非磁性酸化物の単結晶膜中に磁性金属クラスターを方位を揃えて埋め込んだ新しいタイプのナノ材料膜を作製する。(2)電子線プローブを局所的にあて、一個の遷移金属クラスターや界面からの透過電子のエネルギー損失スペクトル(EELS)を測定し、そのスペクトルからナノメーター領域のスピン状態を評価する世界で初めての方法を開発する。(3)人工格子膜やナノグラニュラー膜で見いだされた巨大磁気抵抗やスピングラス様の特異な磁性の発現するメカニズムを解明する、ことを行った 平成9年度は、 (1)FeとCuのクラスターをMgO蒸着単結晶膜に埋め込んだ試料、およびFeクラスターをAgの単結晶膜中に埋め込んだ試料を作製し、その構造を高分解能電子顕微鏡で詳細に研究した。 (2)次にEELS分光器の高性能化をおこない、装置の安定性を極限まで高める実験的研究を行った。 (3)(1)で作製した試料のコアロスピークを測定し、そのL3、L2ピークの比を系統的に採取し、そのスピン状態を計測した。その結果Feクラスターは MgO中で2nmのサイズになっても一個一個のクラスターは強磁性的なモーメントを持っていることが判明した。
|