酵素バイオセンサーを作製する際に、酵素を単分子層薄膜として任意の層数積層することにより電極上の酵素膜の構造規制を実現し、さらに2種類の異なる種類の酵素を固定化量や固定化順序を規制しながら固定化した複合酵素積層膜として、バイオセンサーの高性能化を検討した。酵素積層膜を作製するために、アビジン・ビオチン法を採用した。色素標識アビジンを用いて作製した積層膜の吸光度法による確認、積層膜の酵素活性と累積層数の関係の電気化学的評価、および水晶振動子を用いた積層膜の重量変化の検討、などを実施した。その結果、基本的には当初予期したような積層膜が作製できることを確認した。 次に、GOxとAOxからなる複合酵素積層膜を電極上に作製し、グルコースセンサーの応答に対するアスコルビン酸の妨害を検討した。試料中に含まれるアスコルビン酸は電極で直接電解酸化されるために、GOxのみの積層膜修飾電極では、グルコース標準液に対する検量線は0.1mMのアスコルビン酸(正常血中濃度)により著しい影響を受けた。一方、GOx/AOx複合酵素積層膜で修飾したセンサーでは、1mM以上のグルコース濃度では0.1mMのアスコルビン酸が存在しても検量線はほとんど影響を受けなかった。また、酵素積層膜中のGOxとAOxの層数を任意に制御することにより、センサーの応答性に与える影響を詳しく検討した。その結果、グルコースに対する応答電流はGOxの層数が増えると比例して増大したが、GOx積層膜の作製時間等を勘案すると10層程度が適当であった。また、AOxの層数は2-3層でも充分であるが、AOx酵素活性の安定性が低いため10層程度のAOx層を積層することが最適であった。
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