電子移動特性の向上を目指した二通りの分子インターフェイスを設計し、その構築と基礎的評価を行なった。ここで、(1)多孔質金黒電極を用いた、酸化還元酵素-電極の多次元近接分子インターフェイス、(2)金属イオンを酸化還元酵素中の補酵素に配位するとともに電気化学的に還元析出させ、補酵素-電極間の良好な配向関係を得る、電気化学析出分子インターフェイス、のそれぞれの分子インターフェイスを設計・創製した。 (1)では、化学修飾によりSH基を導入した電子メディエータ修飾グルコース酸化酵素(GOD)を多孔質金黒電極表面にメルカプチド結合により分子集積した結果、酵素分子が多くの点で電極と接する「多点接触インターフェイス」が構築された。この分子インターフェイスにより、酵素分子による触媒電流は、平滑な電極による系と比べて2.5倍程度大きくなることが示された。このことは、分子-電極間の電子移動が、多点接触により円滑に行われるようになったことを示している。 (2)では、2価金属イオンと複合体を形成したGODを電極上に電気化学的に還元析出することにより、インターフェイスを構築した。電極上で、還元され0価となった金属とGODとの複合体はぼぼ一定の分子配向をもって析出されていることが明らかとなった。また、ここで析出したGOD/Cuは電極と直接電子移動が出来ることが示された。このことは、酵素分子1分子中に2つあるフラビンに配位している2原子の金属と電極との間で電子移動を円滑に行なわせるアトミックインターフェイスが構築されていることを示唆している。 ここで設計・創製した分子インターフェイスはどちらも本研究において新規に創製されたものであり、酸化還元酵素-電極間の電子移動特性について検討を行なうモデルシステムとして優れたシンプルなシステムである。このそれぞれについて、分子と電極の関係について詳細な検討を加えることにより、分子-電極間電子移動を行なうための分子界面設計の指針が得られるものと考えられる。
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