本研究では層状金属酸化物をソフトケミカル的手法によって薄膜化し、その物性、構造を評価することによって従来の限界を超えた新規光機能性デバイスの可能性を模索することを目的としている。層状チタン酸の1種であるCs_xTi(2_<-2>/4)□_x/_4O_4のプロトン交換体は、水酸化テトラブチルアンモニウムやエチルアミンの水溶液の中においてチタン酸シートの剥離が可能である。この剥離したシートを基板上にスピンコートすると二次元に配列した層状の薄膜が非常に容易に得られる。この薄膜は層間に有機物であるアミンを含むため熱的安定性に乏しく、それ以上の修飾方法が限定されていたが、水溶液中でイオン交換を行うことにより耐熱性を持たせることに成功した。交換前の薄膜においては、250°C以上の加熱により層間の縮合が起こり、そのイオン交換能が失われる。しかしながら薄膜をCsCl水溶液中で処理することで、層間のアミンがCsイオンに置き換わり、この薄膜は450°Cの加熱後においても層構造を失うことなく、安定であることが確認された。またCs以外にも多種のイオンへの交換が可能であることが確認され、特にNi等においては層間において還元が可能であり、チタン酸シートとNi微粒子を交互に包括した薄膜が得られた。 層状ニオブ酸K_4Nb_6O_<17>はその層間が容易に水和するため、湿式粉砕を行うと超微粒子を含む懸濁液が得られ、この懸濁液を基板上にスピンコートし高温で焼成すると結晶成長が起こり、非常に結晶性の良い層状の薄膜が得られる。この薄膜は前者に比較して結晶性、熱安定性の両者で勝っており、イオン交換能においても種々の金属イオンを始め錯体のインターカレーションも可能であることが分かった。また長鎖のアルキルアミンを層間に挿入することで自由に層間距離が変えられることが確認され、この層間距離を広げた薄膜を前駆体として用いることで、Ru(bpy)_3色素などの大きな分子への交換も可能となった。
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