研究概要 |
光応答性液晶配向膜で表面処理したポリマー電極による液晶の光配向変化について検討した。光応答性配向膜にはベンゾフェノン構造を有するポリイミドを,液晶には強誘電性液晶(FLC)とネマチック液晶(NLC)を用いた。まず,光応答性配向膜によるFLCの配向変化挙動を調べた。セルギャップが2μmの液晶セルに分極反転が起こらない閾値以下のバイアス電界を印加し表面安定化状態(双極子が同一方向へ揃った状態)をとらせた後,高圧水銀ランプの366mの光を照射した。その結果,FLCの光分極反転に基づく配向変化が観察された。また,光応答性配向膜によるFLC応答時間を,レーザーパルス光照射(355nm,10ns)によるプローブ光(633nm)の透過光量の時間分解測定を行うことによって評価した結果,液晶配向変化は約200μsで完了することが明らかとなった。 さらに,実用性の高いNLCを用いても液晶光配向制御が可能であることを見いだした。セルギャップが5μmの液晶セル中にNLCを封入することによって測定用のサンプルを調製した。直交した二枚の偏光板の間に液晶セルを置き,光照射によるプローブ光の透過光量変化を測定することにより液晶の配向変化挙動を評価した。まず,透過光量(T)と印加電圧(V)の関係を,光照射下と未照射下において調べた。得られたT-V曲線から,配向変化が誘起される閾電圧は光照射下と未照射下とでは著しく異なり,光照射下では閾電圧が低下した。次に,未照射下においてホモジニアス配向が保持されている4.5Vにバイアス電圧を設定し,光照射による透過光量変化を調べた。光照射すると直ちに透過光量は減少し,ホモジニアス配向からホメオトロピック配向へと変化することが明らかとなった。
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