研究概要 |
本研究で達成すべき具体的目標として,炭素原子を含む共有結合の切断,組み替えに関する新発見を行うことを目標として研究を行った.本研究班はこの特定研究の「新反応系の合理設計」の研究グループとして,現代化学で用いられている作業仮説を越えた新しい現象と原理を発見することを目的に研究を行った.平成10年度は,前年に引き続き新反応系設計に関する基礎的検討を行った.その成果を以下に示す.本研究の重要な座標軸,すなわち合理的反応設計の座標軸に添って,理論計算による有機金属の反応機構解明を行った結果,有機銅反応におけるクラスター効果,銅(III)中間体の重要性などを明らかにすることができた.さらに反応機構解明の基礎的手法を検討した結果,光学活性ルテニウム錯体による不斉水素化反応に関して,水素化による光学的に不安定なケトン類の動的速度論分割を数式表現し、反応評価システムを構築することができた.遷移金属触媒反応の基礎検討を行う過程で,希原子価有機遷移金属活性種の化学の重要性を解明した.すなわち,1価や4価の原子価を有するパラジウム活性種やヘテロ元素配位子を持つパラジウム活性種の新規変換反応を探索し、新型炭素-炭素結合生成法開発の糸口を見い出すことができた.また一次元π共役系の構築に適した完全な位置選択性および強い金属核間電子相互作用を持つ系を発見することができた.核酸認識を基盤とする新反応系の設計と展開を行い,アプタマー(特異的RNA認識配列)を組み込んだスイッチ型,光駆動型,酸化還元型リボザイムや核酸分子を認識するフラーレンを合成した.
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