生体系に匹敵する優れた選択性を有する分子認識系や不斉錯体触媒系、さらに多重らせん構造系など高次集積分子系を構成する超分子素子の開発は、新機能分子の創生や生体機能への化学的なアプローチとして大きな意義を持ち、分子科学・物質科学・材料工学などの分野で基礎・応用両面にわたり重要な研究課題である。 本年度重点領域研究では、特に、錯体化学や触媒化学の分野で金属配位子として優れた特性を発揮するとともに、生体高分子に見られる高次集積構造を形成する超分子素子として注目を集めている「オリゴピリジン誘導体」の合成と機能化を、立体化学の視点から検討して、以下のような新しい研究成果を挙げた。 (1)非対称置換および光学活性ピリジン誘導体の合成:ラセミピリジンエタノール類を効果的に光学分割できる加水分割酵素リパーゼ検索に成功するとともに、リガンド・カップリング反応によって種々の光学活性ピリジン誘導体の合成を実現した。 (2)銀イオン選択性をもつ光学活性オリゴピリジン・レセプターの開発:銀イオンのみを選択的に捕捉する三つのピリジン環を含む非環状配位子の開発に成功した。さらにピリジン・ユニットへの立体化学因子の導入によって、銀イオン捕捉能を8〜10倍も向上できることを明らかにした。
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