研究概要 |
超高圧条件下での4族メタロセン-メチルアルミノキサンを触媒とするオレフィン重合反応は、特異な圧力依存性を示すことを我々は先に報告した。即ち、2500-5000気圧において触媒活性、分子量共に極大値を与え、それより高い圧力下では活性・分子量とも減少する。これは従来の高圧有機反応には見られない挙動であり、錯体触媒反応ゆえのふるまいである。我々は、この特異な圧力依存性を説明するために、得られるポリオレフィンのポリマー末端を詳細に検討し、錯体上で起こる個々の素反応について高圧下での加速・減速効果について興味深い情報を得た。高圧条件下では、オレフィンの通常の1,2-挿入に加え、2,1-逆挿入が加速されることにより、ポリマー末端に1,2-二置換の内部オレフィンが多くなることが分かった。このことは重合活性種が2,1-挿入により二級の炭素鎖を有する、低反応性の種に変化していることを示す。これが、高圧下での真の活性種の濃度の減少を引き起こしているらしい。 また、常圧と高圧での分子量の濃度依存性を検討することにより停止反応について検討したところ、二分子過程であるオレフィンへのβ-水素移動による停止反応が高圧下で加速されていることが分かった。高圧下で成長反応が促進されるにもかかわらず分子量がそれほど伸びないのは停止反応もまた加速されているからに他ならないことが明らかとなった。 加えて、かさ高い置換基を持つメタロセン錯体において高圧重合の影響を検討したところ三級ブチル基を配位子上に有する錯体では高圧の効果があまり現れないことが分かり、高圧反応のリミットも明らかとなった。
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