研究概要 |
標題の研究を実施するにあたり,今回は1)ボリル錯体の開発,2)アミンボラン,THFボランとアルキル置換シクロペンタジェニルルテニウム錯体との反応によるメタラボランクラスターの合成,3)テトラボラテトラヘドラン誘導体の合成を行った. 1)ボリレン錯体の前駆体としてボリル錯体を用いることを意図してボリル金属錯体の開発を行いメチル錯体の光反応が従来見出していたW錯体だけでなくMo,Fe錯体にも拡張できることを明らかにし,[Cp^*Mo(CO)_3)(BH_2・PMe_3)],[Cp^*Fe(CO)_2(BH_2・PMe_3)]の合成に成功した.またRu錯体は光反応で合成できなかったが,アニオン錯体の求核置換反応を利用して合成に成功した.同じ反応は鉄錯体の合成にも適用できることがわかり,ボリル錯体の一般的合成法として利用できることを明らかにした.今後更にボリル錯体合成開発を図るとともに,水素引き抜き反応によるボリレン錯体の合成を試みる. 2)[Cp^*RuCl]_4とBH_3・NMe_3との反応により紫色の結晶が得られ,NMR等によりボリド錯体[Cp^*_3Ru_3H_3(BNMe_3)_2]の構造をもつと推定している.また[Cp^*RuCl]_4とBH_3・THFとの反応ではnido-ジメタラペンタボランクラスター[Cp^*_2Ru_2B_3H_9が得られ,NMR,IRによりRu‐RU間に二つの架橋水素をもつピラミッド型構造を推定した. これらの反応は[Cp^*RuCl]_4とBH_3・PMe_3との反応においてB‐P結合が切れ,クロロトリヒドロボレート錯体[Cp^*Ru(PMe_3)(BH_3Cl)]が生成した例とは全く異なり,ボリド錯体の新しい合成法として注目される.現在結晶解析を進めている. 3)ボリレン錯体の前駆体として嵩高い置換基を有するテトラボラテトラヘドランの合成を試みている.RとしてSi(SiMe_3)_3の合成を試みたが期待する化学物が得られなかった.Rが立体的に大きすぎるためと考え,現在RとしてCH(SiMe_3)_2を導入して合成を試みている.
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