ホスファイト誘導体を配位子とする6族遷移金属アルキル錯体とLewis酸(BF_3・OEt_2)との反応を調べた。その結果、アミノ置換ホスファイトを配位子とする錯体の場合は、ホスフェニウム錯体が生成し、その後、遷移金属上のアルキル基がホスフェニウムのリン原子へ転位する反応が進行することが明らかとなった。ホスファイトを配位子とする場合には、リン上のOR基の引き抜きと、金属上のアルキル基の引き抜きが併発して起こることが分かった。 14族元素を配位子とするピアノ椅子型鉄ホスファイト錯体とLewis酸(BF_3・OEt_2)との反応では、生成するホスフェニウム錯体の反応性が、14族元素の種類によって大きく異なることが明らかとなった。アルキル錯体の場合は、アルキル基がホスフェニウムへすばやく転位する。シリルおよびゲルミル錯体の場合は転位は見られず、シリル錯体の場合はホスフェニウム錯体のX線構造解析を行うことに成功した。その結果、鉄ーリン間の結合はかなり短く、リン周りは平面構造をとり、またその平面はCp(CO)(SiMe_3)FeフラグメントのHOMOと上手く重なる配向を取っていることが分かった。これらの結果は、鉄ーリン間に強い二重結合性があることを示している。スタニル錯体の場合は、スズ上のアルキル基がホスフェニウムに転位し、鉄-スズ間に二重結合をもつスタニレン錯体が生成することが明らかとなった。また、シリル、ゲルミル、スタニル基を有するホスフェニウム錯体について、ホスフェニウム基の回転エネルギーを温度可変NMR測定により求めることに成功した。
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