【平成9年度の研究実績概要】光アフィニティーラベルは、ラベル試薬の合成から、蛋白質の量的確保、ラベル後の消化・精製・配列解析までのマラソン型研究である。従って化学的構造生物学推進のためには、この過程の効率化は、今や最大の課題である。我々は、高速化のポイントを非放射性プローブの導入と、ラベル生成物の精製に費やす、膨大な時間の短縮に絞って検討した。我々がすでに開発に成功した、ビオチンを搭載する新型光アフィニティープローブは、この問題解決には極めて有効で、容易にかつ特異的にビオチンタグを導入する新しい方法論が可能となる。本年度は、この「光アフィニティービオチン化」のノウハウ蓄積を主眼に、その開発と応用に取り組んだ。このプローブがウシガラクトース転位酵素(GalT)を特異的にラベルすることは確認していたので、ラベル部位解析のスピードアップに、ビオチンタグをフルに活用した新しいアプローチを検討した。ラベル蛋白質の分離と非ラベルGalTの再利用に固定化アビジンを利用し、ラベル蛋白質の消化過程で疎水性断片が容器に吸着して損失するのを防ぐため、PVDF′(polyvinylidene difluoride)膜上で微量消化した。さらに、HPLCで分離後のペプチド断片を膜に固定化できるアミノPVDF膜を開発し、ラベルピークが化学発光操作中に溶出するのを防ぎ、ピーク検出上の問題点をクリア-した。この結果、消化混合物中から化学発光ポジティブなピーク検出に成功し、この発光がアビジンでブロックされることからGalTのラベル部位としてTyr^<197>-Arg^<208>を短期間で同定し、光アフィニティービオチン化の有効性を実証した。このアプローチは、最新の質量分析法と組み合わせて、さらに微量・高速化が可能であり、将来的には自動化も期待される。
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