1.MBP-CD38とガングリオシドとの共結晶の構造解析 (1)界面活性剤非存在下でのMBP-CD38の大量調製 本研究ではCD38とガングリオシドとの共結晶の構造解析を計画している。膜タンパク質であるCD38をそのまま大量に調製することは困難であることが予想されたので膜貫通部分を切り落とし、MBP-CD38(約66kDa)の大量調製を行った。大腸菌で発現させたMBP-CD38は不活性型であり、塩酸グアニジン存在下で透析することにより活性化が少量現れる。発現したMBP-CD38のS-S結合をDTT存在下で切断してから透析を行ったところ活性型の収率が上昇しまた界面活性剤非存在下での大量調製が可能になった。現在8Lの大腸菌培養液から約80mgのMBP-CD38が得られ、ゲル濾過カラムとFPLC MonoQカラムにより約1mgを活性型として得ている。 (2)結晶下の条件検討 MBP-CD38を直接濃縮すると、沈澱を生じて回収率が悪かった。そこでガングリオシド存在化で濃縮したところ回収率の低下が起こらなくなった。現在結晶化の条件検討を開始している。 2.in vivoにおけるCD38とガングリオシドとの相互作用 レチノイン酸処理をおこなうことによりHL60細胞の表面にCD38を発現させることができる(以下RA-HL60)。RA-HL60細胞の培地にガングリオシドを加えた場合にもNAD分解量の減少が見られた。阻害の程度は糖鎖構造に依存した。並行しておこなったFlow cytometryの実験では細胞表面のCD38量にはガングリオシド処理による変化がなかったのでガングリオシドはRA-HL60細胞の表面においてCD38と相互作用してそのNADase活性を阻害すると考えられる。
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