研究概要 |
申請者は神経系におけるガングリオシドの機能の解明を目的として、抗ガングリオシド抗体で免疫沈降する際に共沈してくる蛋白質の同定を試みた。 ラット脳TritonX-100遠心上清の抗ガングリオシドGD3抗体による免疫沈降物に[γ-^<32>P]ATPを加えたところ、分子量53,56kDaの蛋白質の特異的なチロシンリン酸化が検出された。ペプチドマッピングおよび免疫沈降実験から、srcファミリーチロシンキナーゼLynであることがわかった。CHO細胞(ガングリオシドとしてGM3のみ発現、GM3はGD3合成酵素の基質)にガングリオシドGD3合成酵素遺伝子およびLyn遺伝子のcDNAを共発現させたところ、抗GD3抗体でLyn活性が共沈し、抗Lyn抗体でガングリオシドGD3が共沈した。抗GD3抗体はラット小脳初代培養ニューロンにおいてLynを活性化し、一過性のチロシンリン酸化を引き起こした。さらにショ糖密度勾配遠心で、ラット小脳LynおよびCHO細胞に発現させたLynはスフィンゴ脂質マイクロドメイン画分に回収された。CHO細胞にGD3合成酵素cDNAを発現させたところ、抗GD3抗体でカベオリン(マイクロドメインマーカー蛋白質)が共沈した。以上の結果から、ガングリオシドGD3はラット脳膜上のスフィンゴ脂質マイクロドメインにおいてLynと結合しており、その活性を制御している可能性が考えられる。
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