ニアフィールドの化学

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09241106
• 研究種目: 重点領域研究
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 入江 正浩 九州大学, 工学部, 教授 (30001986)
• 研究分担者: 岡崎 敏 京都大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40025383) ; 五神 真 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (70161809) ; 藤平 正道 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (40013536)
• キーワード: ニアフィールド光学 / プローブ顕微鏡 / 光メモリ / レーザー / フォトクロニズム / 微細加工 / エバネッセント光

研究概要

微小領域に局在したエバネッセントフォトンにより誘起される多様な化学、物理現象を、吸収法、蛍光法、ラマン分光法、さらには種々のプローブ顕微鏡法などと組み合わせて追跡し、解析するとともに、それらを超高密度光メモリ、超微細加工などへ応用することを目的とした。
光異性化反応するフォトクロミック分子を光記録媒体とするニアフィールドメモリを試みた。記録の検出には、透過光吸収法と蛍光法とが考えられるが、それらの得失を理論的に検討し、吸収変化の少ない場合は、蛍光法が有利で、広いシステムバンド幅にまで適用可能であることを確認した。微小領域における蛍光検出法を、フォトクロミック反応によりその蛍光強度が可逆に変化するペリナフトチオインジゴ薄膜を用いて検討した。633nm光および488nm光を微小開口部をもった光ファイバーから交互に照射することにより、書き込み、蛍光による検出、消去を行うことができた。記録スポットは、最小50nm径のものが得られた。これは、現状の約200倍の面記録密度に対応する。
Q値の高いガラス微小プローブを作製し、球表面付近に置かれた単一の分子の共鳴励起に成功した。また、ワイドギャップ半導体CuCl結晶から自己形成的に微小球共鳴器を作成し、光ポンピングによるレーザー発振を観測した。これらを基に、近接場領域での輻射場と物質との相互作用の解明をすすめている。
従来のピコ秒レーザを発展させた100nm程度の横分解能をもつ過渡吸収スペクトル測定のための装置開発をすすめている。また、局所場における電気化学反応を解析する目的で、ニアフィールド電気化学顕微鏡の開発を行っている。

研究成果

• [文献書誌] H.Muramatsu,N.Yamamoto,T.Uemoto K.Homma,N.Chiba,T.Ataka,M.Fujihira: "A Self Sensitive Probe Composed of a Piezoelectric Tuning Fork and a Bent Optical Fiber Tip for Scanning Near-field Optical/Amotic Force Microscopy" Jpn.J.Appl.Phys.36. 5753-5758 (1997)
• [文献書誌] H.Muramatsu,N.Chiba M.Fujihira: "Frictional imagine in a scanning near-field optical/atomic-force microscope by a thin step etched optical fiber probe" Appl.Phys.Lett.71. 2061-2063 (1997)
• [文献書誌] M.Irie,T.Lifka,K.Uchida: "Photochromism of Single Crystalline Diarylethenes" Mol.Cryst.Liq.Cryst.297-298. 81-84 (1997)
• [文献書誌] T.Tsujioka,M.Kume,T.Horikawa A.Ishikawa.M.Irie: "Super-Resolution Disk with a Photochromic Mask Layer" Jpn.J.Appl.Phys.Part 1. 36. 526-529 (1997)
• [文献書誌] D.J.Norris,M.Kuwata-Gonokami W.E.Moerner: "Excitation of a Single Molecule on the Surface of a Spherical Microcavity" Appl.Phys.Lett.71. 297-299 (1997)
• [文献書誌] S.Yoshida,N.Yamamoto,T.Nagamura M.Oyama,S.Okazaki: "Dynamic Transformation in Morphology of Pd-deposited Si(111)Surface with Thermal Treatment by Using UHV-STM" Surface Sci.393. L84-L87 (1997)