本年度は、金属スリットを用いた近接場-電子相互作用を波長10μm帯で観測する事を目的に、その実験準備を当初計画通り進めた。又、金属スリット回路を近接場プローブとして用いる近接場顕微鏡を提案し、そのミリ波帯での実験的な検証に成功した。 以下に、その成果を箇条書きに示す。 1.金属スリット回路の設計理論を確立した。 赤外線近接場-電子相互作用の理論解析を行い、レーザー波長-電子速度-スリット幅の関係を明らかし、スリット回路設計の基礎理論を確立した。その結果より、初期速度0.5c(c:光速)の電子ビーム、波長10.6μmのCO2レーザーを用い、10kW以上のレーザー出力で、観測可能な1eV以上の電子エネルギー変化が得られることが分かった。 2.主な実験装置の製作を完了した。 理論解析結果に基づき、スリット幅が0〜8μmまで連続可変の金属スリット回路、精度1μmの真空マニュピレータ、高感度電子検出部等の主な装置の製作を終了した。 3.金属スリットプローブを用いた新型近接場顕微鏡システムの開発。 透過効率の非常に高いスリット型プローブの特徴を活かして、金属スリットプローブとX線断層写真で用いられる画像再構成アルゴリズムを利用した、全く新しい形の近接場顕微鏡システムを提案し、その有用性をミリ波帯で実証した。
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