本研究で取り上げたニオブ酸リチウム(LiNbO_3)は、圧電性を利用した表面弾性波素子や光導波路などの光学結晶として重要であるだけでなく、入射光強度に応じて屈折率が変化したり、波長変換を伴う光高調波発生などの優れた非線形光学特性を有しており、将来の光デバイスのキ-マテリアルとして注目されている。本研究では、我々が開発したパルスレーザー蒸着法をベースとする酸化物薄膜原子層制御技術を駆使して、LiNbO_3などの光学結晶におけるナノメーターサイズの微結晶ドット形成過程について原子レベルで検討し、さらに近接場走査光学顕微鏡への応用の観点からナノドット光学結晶の非線形光学特性を調べ、下記のような研究成果を得た。 (1)超平坦サファイア基板上へのLiNbO3ナノクリスタルの合成 成膜用基板として光透過性、および安定性に優れたサファイア(単結晶アルミナ)基板を用い、熱化学処理を施して分子層ステップ(0.2nm〜10nm)と原子レベルで超平坦なテラス面からなる表面を形成することができた。マルチ分子層ステップを有する超平坦サファイア基板上への堆積により、ステップ端に沿った形でのLiNbO3ナノクリスタルの合成に成功した。 (2)LiNbO3ナノクリスタルの光学的特性の評価 得られたLiNbO3ナノクリスタル薄膜の光学特性として、室温での可視発光(PL)特性を調べた。励起光源は、He-Cdレーザー(325nm、6.5mW)を用いた。図2に示すように、500nm付近にピークをもつPL発光が観測された。次に、SNOMにより40nmサイズのLiNbO3ナノクリスタルの非線形光学特性を評価したところ、2次の非線形光学効果を観測することができた。
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