SNOMでしばしば、その解像度を見積もるために各種のグレーティングを測定に用いることがある。しかし、このグレーティング表面にどのような近接場が発生するのかの理論的な解析は、意外にも行なわれていない。そのため、SNOMによって得られたグレーティングの映像の解釈も明確には行なえていない。ここでは、グレーティングの表面上に発生する近接場を理論的に明らかにするため、表面に凸凹な溝が周期的に作られた周期構造を持つ誘電体格子が空気と接する場合に、その境界面上の空気領域に発生する近接場の解析を行なった。 透過型SNOM像の解析を仮定し、平面電磁界(光)が誘電体内部から空気層へ入射した場合を解析した。解析には、周期構造線路での電磁界の伝搬、散乱、回析の解析に用いられるフロケの定理、モード展開理論を用いた。また、解析を簡単にするため、入射平面電磁界としてはTE(S)波を用いた。 理論解析に基づき、周期境界上の近接場の強度分布を数値計算した。計算の妥当性を評価するため、我々が以前、マイクロ波で行った近接場強度分布の測定の実験条件と同じパラメタ(比誘電率を空気層1.0、誘電体層1.5)で数値計算を行った。数値計算とマクロ波の測定結果を比較し、本解析手法がマイクロ波実験の結果をよく説明していることを示した。さらに、実際のSNOMの測定で用いられる波長以下の構造によって発生する近接場の強度分布を計算した。計算結果から、表面に非常に近い位置の近接場のみしか表面形状を反映していないことを示した。このことは、一般にSNOMの測定で言われていることに一致している。
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