研究概要 |
低温でSnイオン注入したInPの表面層を断面TEMで調べ、多結晶リングを観察した。このうち、一連の強いリングはInPの高圧相であるrock-salt型のX-ray diffractionデータと良く対応することから、イオン注入によって蓄積された応力によって、表面層がzinc-blend型からrock-salt型に相変態したものと考えた。この現象をさらに探索するため、系をInSb,GaSb,GaAsにひろげた。 InP、InSbではrock-salt型のリングが観察されたが、他のふたつのGa系ではみとめられなかった。特にGaSbには、非晶質をあらわすハロ-がわずかに認められるのみであった。 再度、同定を見直した。その結果、InPおよびInSbのすべてのリングは、In_2O_3のX-rayデータとよく符号することがわかった。酸化物In_2O_3がどこに存在するか、分析TEMによって調べた。観察結果から、試料を薄膜化するさいに飛散したInが酸素と結合し、In_2O_3となって、TEM試料上に残ってしまったものと考えられる。 最近、1.5x10^<15>Sn^+/cm^2注入InPをあらためてJEOL JEM-2010Fで観察したところ、注入層の支配的な構造は非晶質であった。しかし、rock-salt type構造とみられるextra spotも観察されている。8x10^<14>Sn^+/cm^2注入した試料のSAEDには、母相の格子定数の縮小が見られ、zinc-blend typeからrock-salt typeへの相変態が生じてもおかしくない。
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