研究概要 |
本研究グループで行った五つのテーマに対し、以下テーマごとに研究成果の概要を示す。 (a)変位型1次相変態の機構に関する研究では、Ti-Ni系(Ti-Ni,Ti-Ni-Cu,Ti-Ni-Fe)合金単結晶を用い、直方体共振法により変態前の弾性定数を系統的に測定し、この合金系における3種類のマルテンサイト変態と、弾性定数(c′,c_<44>)及び弾性異方性(A≡c_<44>/c′)の温度依存性の間に密接な関係のあることを明らかにした。 (b)変位型1次相変態と格子欠陥の相互作用では、マルテンサイト変態の際の点欠陥の挙動に関しで、SC-SRO(Symmetry-Conforming Short Range Order)の考え(Nature,1997)を導入して、この考えに従えば、長年未解決だったゴム弾性的挙動も全て矛盾なく説明出来ると共に、この現象に基づく新しい現象、microstructure-memory及びtwo-way shape memory(Phys.Rev.Lett.,2000)の現れることを明らかにした。 (c)変位型1次相変態の熱力学に対する新しいアプローチでは、従来全く異なる変態と考えられてきた非等温型変態と等温型変態を統一的に扱う掛下等の機構に対して実験的検証を行い、等温型が磁場下で非等温型に、非等温型が静水圧下で等温型に移行する事等を示すことによって、この機構が良く成り立つことを示すことができた。 (d)薄膜における変位型1次相変態では、スパッター法で作製されるTi-Ni合金薄膜を、組成並びに熱処理の関数として、電顕等を用いて詳細に研究し、組成及び熱処理の関数として、五つの析出状態のあることを明らかにした。 (e)合金ナノ粒子における変位型1次相変態では、透過電顕と真空蒸着装置を直結する装置を開発して、試料を空気に曝すことなく、従来にないサイズのナノ粒子におけるマルテンサイト変態を電顕中で直接観察した。この結果、ナノ粒子における変態温度は大幅に低下するが、その原因は従来の考えでは説明出来ないことが明らかになった。
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