研究分担者 |
寺崎 治 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30004401)
井野 博満 法政大学, 工学部, 教授 (20029466)
宝野 和博 金材技研, 物性解析研究部, 主任研究員
弘津 禎彦 大阪大学, 産研, 教授 (70016525)
松井 正顕 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90013531)
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研究概要 |
本研究は相変態を切口として特殊環境下で合成された薄膜,アモルファスおよび新物質(クラスター系)を対象とし,研究し未解明な課題の80%以上を解明でき応用分野への基礎データを提供することができた。(I)特殊環境下における相変態挙動の実験的・理論的解析へのアプローチ:イ)相変態初期過程での構造変化の原子尺度からの観察と実験的解析(宝野和博)/ナノスケールの不均一組織の解析法の確立・開発を図り,それによるより詳細な因果関係を解明し材料開発に貢献した.プロセス性の容易なナノコンポジット磁石原料の作製法を提案し,ナノコンポジット磁石における組織形成機構を解明し最適特性を得るための指針を提供した.また,Zr墓アモルファス合金において特定量の酸素でアモルファスからナノスケールの準結晶を析出させることができることを見出した.ロ)特殊環境下での人工構造物質の合成と相変態挙動の研究(寺崎治)/ミクロ・メソ空間を有するゼオライトとその類縁物質系を新規に合成することで二次元の空隙構造を有する大きな単結晶を作りX線構造解析と電子顕微鏡による構造解析を結合した実験手法を開発し,未解明の系構造に適用して具体的な空隙構造を決定することができた.さらに,ミクロ・メソ空間を容器として有機基を入れてバルクと顕著に異なる物質を創製できることを実証した.(2)金属・合金膜および人工格子膜中の相変態挙動の解析と材料物性:イ)非平衡fcc-feエピタキシャル薄膜の構造と磁性の制御(松井正顕)/超高真空下で1原子層づつ精密制御してエピタキシャル成長させた膜(非平衡膜),さらにそれらの2種類の膜を厚さ方向に人工的並進対称性(周期性)を持たせた金属人工格子(低次元磁性体)を対象として構造相転移および磁気相転移の機構を明らかにした.また,3d金属Feを中心にbccをfccに,またfccをbccにする非平衡相の相安定化の原子層数を決定し,γ-Feの構造安定性について詳細に解析した.ロ)熱力学的非平衡堆積ナノコンポジット薄膜の構造変化と電磁気特性(入戸野修)/熱力学的非平衡なプラズマ状態等で合成した物質の相変態過程の特徴を明らかにすることで新物質創製に有効な設計指針を提供した.通常熱力学的に合成され難い物質が容易に合成できること,合成後の熱処理による物性変化は平衡相の変化を基にして理解できること,複合物性を示すナノコンポジット薄膜の合成法について指針を示した。(3)「準結晶-結晶」型ならびに「非晶質-結晶」型相変態機構の解明:イ)液体急冷凝固試料における結晶化過程の実験的・理論的解析(井野博満)/強磁性結合する強磁性クラスター系の相変態,強磁性Sm物質の磁気変態およびfcc鉄合金の強磁性の発現条件について研究し,液体急冷La-FeとPr-Fe合金について超強磁性モデルを提案しその有用性を明らかにした.またSmイオンのスピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの温度変化の違いにより,ある温度で磁化の打ち消し合いが起こり磁化のない強磁性体を実現することを実験的・理論的に示した.ロ)軟磁性および高強度非晶質合金のナノ結晶化過程の精密構造解析(弘津禎彦)/アモルファス合金のナノ結晶組織形成過程および相分離構造を電子回折・電子顕微鏡法および動径分布関数・構造シュミレーションを結びつけた精密解析法を開発し,組織制御に関する知見から材料開発の指針を与えた.また,班員が連携し,同一条件下で作製したアモルファス試料について異なる解析手法により同一試料を詳細に総合解析することを試み多くの研究成果を挙げることができた.
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