研究概要 |
本研究は、第一原理計算による相変態機構の解明、非線形発展方程式による組織形成過程の研究と材料設計への応用、および相変態ミクロ機構とマクロ組織との関連性の追究から、相変態の本質を探ることを目的とするものである。今年度の成果は以下のようである。 1)非線形発展方程式に基づく組織形成過程の解析(宮崎) 平衡状態図に関する熱力学的データが既知である以下の合金(Al-Zn,Cu-Co,Fe-Mo,Fe-Al-Co,Fe-Cr,各種III-V族混晶半導体 等)の相分解の時間発展過程を実験的に調べると同時に、これら合金系の相分解過程に対して、Phase-Field法に基づき計算機シミュレーションを行った。実験と計算との比較から、本計算手法が実験データを定量的に再現できることが明らかになった。 2)相変態における臨界挙動の計算(毛利) クラスター変分法と経路確率法を用いて規則-不規則変態点近傍におけるsusceptibilityと緩和時間の計算を行い次の結論を得た。一次変態の場合、susceptibilityはスビノーダル・ディスオーダリングの温度に向かって発散する。二次変態の臨界点において臨界減速現象が知られているが、一次変態でも同様な現象が発生することが経路確率法を用いて示された。これは上述のsusceptibilityの発散つまり自由エネルギー曲面の平坦化による駆動力の消失から説明できる。 3)マルテンサイト変態におけるゴム弾性的挙動の理論(太田) 秩序変数の他にそれと相互作用する遅い変数を導入することにより、マルテンサイト相における時効効果が定量的に説明できることが示された。フェイズフィールド的発展方程式から、ツイン境界の運動に着目して応力と歪みに対する構成方程式を導出し、これを解析することにより、時効に伴う応力歪み曲線の変化や振動数依存性を解析した。
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