研究概要 |
X線異常散乱法をより実際的な方法とし、さらに高度化するためには、ふさわしい合金を選び、その実験および解析を通じて方法の確立をすることが重要であることから、以下の4点に関する作業を進め有意義な結果を得た。 1.合金試料作成用赤外線加熱炉の製作:回転楕円体鏡面の一方の焦点に赤外線ランプを、他方の焦点に試料を置くように設計された加熱炉を2台向かい合うように設置し最大4kWまで加熱できる。試料温度は約1700℃に到達し、清浄な合金試料の作成に有力であることが分かった。試料室は真空の外、ガス置換を行うなどができる。 2.Cu_2NiPtの示差熱分析:800℃と600℃に相変態の存在を示唆するブロードな吸熱ピークを見つけた。前者は規則-不規則変態、後者は2種の規則構造間の変態であると推定される。 3.Cu_2NiPtインゴット単結晶におけるX線散漫散乱の検出:CuKα線による単結晶X線回折実験を試みた結果、Cu型面心立方構造を取ることが分かった。また、逆格子の1,0,0および1/2,1/2,1/2規則格子反射点で、半値幅0.3(h)程度に広がった散漫散乱斑点が存在することを見い出した。これは、2元合金との対応で極めて興味深いものである。異常散乱法の適用が重要であることが分った。 4.部分散漫散乱強度分布から規則化エネルギーを求める理論:異常散乱法によって得た部分散漫散乱強度は、原子間に働いている相互作用の情報を含む。われわれは部分規則化エネルギーを解析的に求める理論的方法を導いた。これは、“X-ray Diffuse Intensity Analysis for the Partial Interatomic Interactions in a Ternary Alloy System"と題してActa Cryst.に投稿する準備をしている。
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